ひとりひとりと対話して、あなただけのコーヒーを。国宝・太山寺の麓に佇む太山寺珈琲焙煎室

2025年6月20日

約1300年の歴史を誇る、神戸市唯一の国宝・太山寺。仁王門を抜けてすぐ、参道脇の木漏れ日をくぐると、スペシャルティコーヒー専門店＜太山寺珈琲焙煎室＞が静かに佇んでいます。コーヒーが好きな人も、そうでない人も、1度訪れるとファンになってしまう。そんなコーヒー専門店の魅力に迫りました。

コーヒーが苦手な人こそ訪ねてほしい。誰もが気兼ねなくオーダーできるお店づくり

「実は、元々コーヒーが飲めなかったんです。」と話す、オーナーの横野さん。社会人になりたての頃はシステムエンジニアとして働いていたそうで、「数百円でもいいから『ありがとう』と言われる仕事に就きたい」と一念発起。当時カフェブームが起きていたこともあり、ラテアートを通じてカフェ経営に興味を持ち始めたそう。しかし、当時の横野さんにとって、コーヒーは「お店を開くために勉強しないといけないもの」でした。そんなある日、本当に美味しいと感じるコーヒーと出会い、“自分でも飲める”という衝撃を受けます。「その時、コーヒーが苦手だと思い込んでいる人に、もう我慢しなくていいと伝えられるようなコーヒーを提供したいと思ったんです」。そうして専門性を突き詰め、横野さん自ら豆を選び抜き、本当に美味しいコーヒーにこだわる＜太山寺珈琲焙煎室＞がオープンしました。

店内に入ると、全22種のコーヒー豆のテイスターがズラリ。テイスティンググラスは香水にも使われる本格的なものを使用しているそう。お客様は1組ずつ店内にご案内するスタイルで、「周りにお客さんがいると、遠慮してなかなかお話できないだろうから」というオーナーの粋な計らいによるもの。好みや気分を丁寧に聞き出してくれた上で、豆を選んでくれます。例えば、コーヒーより紅茶を好んで飲むようなあっさりした味わいが好きな方には、[エチオピアイルガチェフG1 ゲデブウリ]の浅煎りがおすすめ。フローラルな香りが鼻をくすぐり、口に含むと驚くほど柔らかな口当たり。重さがなく、最後までごくごくと飲み干してしまう一杯です。

思うままに香りを楽しむも良し、豆のストーリーに思いを馳せるも良し。難しいことはわからなくても、オーナーやスタッフさんが楽しくお話ししてくれます

コーヒーの魅力は、味わうだけじゃない。イベントやポップアップで広がる豊かな時間

「コーヒーが世界中で愛される理由は、コーヒーそのものだけではなく、コーヒーを片手に政治の話をしたり、最近の出来事について話したり、コミュニケーションのきっかけや活力になる文化も含めて魅力だと思うんです」と語る横野さん。コーヒーと一緒に楽しめるコンテンツづくりにも力を入れています。敷地内では、オーナーとゆかりのある方々によるポップアップが開催されており、カレー屋さん、絵描きさん、お花屋さんなど、そのジャンルは多岐にわたります。イベントの種類もさまざま。夏休みには子どもたち向けの手網焙煎会が開かれ、スタッフがつきっきりで楽しむそう。「コーヒーは大人の飲み物じゃない。小さな頃から身近な存在だと感じてくれたら嬉しい」との想いから始まった人気のイベントです。

イベントの告知はインスタグラムでのみ行われており、車でないとなかなか行きづらい場所であるにも関わらず、意外にも新規のお客様が多いのだとか。デジタル疲れを感じやすい現代だからこそ、時間がゆっくり流れるこの場所で、あなただけのコーヒーの楽しみ方を見つけてみてはいかがでしょうか。きっと、人に自慢したくなるような「とっておきの場所」になるはずです。