通行料金のしくみ

道路は、私達の社会生活上欠かすことのできないもので、本来は国や地方自治体が税金で整備し、その道路は無料で利用できるのが原則です。
しかし、道路整備に使える税金の額は限られ、膨大な道路需要に対応できず、整備には極めて長時間を要します。
そこで、国において、昭和31年に道路整備特別措置法という法律が定められ、早期に道路整備を図るための有料道路制度ができました。この法律に基づいて、借入金によって道路の整備を行ない、受益者負担の観点から通行料金を利用者から徴収し、それを借入金の返済に充てるというものです。
また、これらの通行料金は、借入金の返済やその利息の返済のほか、道路の維持・点検・補修・改良・交通管理に必要な費用として使われています。

有料道路事業の基本スキーム

1.

整備時

整備費用を国や民間からの借入、市からの出資により調達
整備費用は事業資産として貸借対照表に記載

2.

期中(有料道路40年、駐車場30年)

収支差(償還準備金繰入額)を毎年積立てていく

3.

料金徴収期間終了時

「道路資産額=償還準備金」となり、市へ移管する

道路公社の会計原則

道路公社の会計は独特の会計方式です。公社会計の原則について簡単に説明します。

原則①

道路資産= (道路・駐車場の)建設費 =借入金+出資金

「道路資産」とは道路整備特別措置法に基づいて整備された有料道路や駐車場のこと。その資産価値は建設にかかった費用であり、公社は建設費用を国や銀行からの借入金と市からの出資金で調達します。

一般的に、資産は年数の経過とともに資産価値が減少していきます(減価償却)。しかし、道路は日々きちんと維持管理されるため資産価値は減少しないと考えられています。そのため、建設後何年経過したとしても、上記の原則が成立します。

原則②

償還準備金=毎年の利益の累積額

一般的には、毎年の収支差(収入-支払)を利益と呼びます。しかし公社会計では、その利益のことを償還準備金繰入額と呼び、毎年積立を行っており、その累積額を償還準備金と呼びます。例えば、料金収入が60億円あり(収入)、道路の維持管理に係る費用等の合計が50億円かかった(支払)とした場合、その差額10億円(収支差)が償還準備金繰入額となります。

公社会計では、利益を償還準備金として費用処理するので、毎年の収支差は0円となります。

原則③

道路資産は料金徴収期限までに償還準備金でまかなう

毎年度の損益で生じた「償還準備金繰入額」は貸借対照表の負債の部に計上し、償還状況を把握しています。「道路資産」-「償還準備金」=「未償還額」となります。

通行料金設定の原則

道路公社の収入は主に有料道路の通行料金です。その料金設定の原則について説明します。

原則①

便益主義の原則

一般の道路を通行する場合と比べて、有料道路を利用することにより、利用者が通常受ける利益の金額(便益額)を超えないように料金を設定しなければならないことをいいます。便益額は、有料道路の利用によって短縮される時間を貨幣価値に換算した金額(時間便益)と、有料道路の利用によって走行経費を節約できる金額(走行便益)の合計で決められます。

原則②

償還主義の原則

徴収した料金の合計額により、道路にかかった費用の合計額を、国において定められた料金徴収期間内にまかなえるように料金を設定しなければならないことをいいます。道路にかかった費用としては、道路の新設・改築・維持・管理・災害復旧・調査に必要な費用、料金徴収に必要な費用、損失補填引当金、借入金の利息などがあります。ただし、料金徴収期限は、道路の改築や延伸などの追加事業を行った場合に延長されることがあります。以上のことから、料金の額については、便益額の範囲内で道路にかかった費用の合計額を返済できるように設定されます